みなさんお疲れ様です。
今回は、障がい者施設の中でも利用者の多い生活介護の生活支援員の仕事内容とそのやりがいについて紹介します。
生活介護事業は、主に知的障がい者を中心に多くの障がい者が利用できる通所サービスです。
また、これから障がい者施設で働く未経験者が生活支援員として特に配属されやすい職場(サービス)の1つなのです。
この記事では、そんな生活支援員の仕事内容ややりがい、心構えや気になる実情をご紹介します。
生活介護での生活支援員の仕事
障がい者施設を利用する障がい者を「利用者」と呼び、利用者を支えることを「支援」と言いますが、施設利用者を支援する主な目的の1つは「自立」です。
人として最低限の日常生活を営むことができるよう動作や知識の習得によって、たとえ人の手を借りたとしても極力自分でできるようにすることが生活介護の目的です。
生活介護の生活支援員の仕事内容
主に障がい者の食事や入浴、排泄などを介助し、その他創作活動や生産活動を支援していきます。
生活介護において支援していく職員を「生活支援員」と呼びます。
生活支援員は、より利用者に身近で密接に関わり、現場の直接支援を行います。
障がい者支援の現場支援において、代表されるいくつかの支援を紹介していきます。
- ・全介助…その行為や動作の全てについて支援すること。
- ・半介助…その行為や動作のおおよそ半分程度支援すること。
- ・一部介助…その行為や動作の全体に対して一部のみ支援すること。
- ・仕上げ支援…その自立行為や自立動作後の不足部分を確認し、行為や動作を十全なものに仕上げること。
- ・見守り…その自立行為や自立動作が安全に又は確実に行われることを期待して見守り、必要に応じて介助を行うこと。
- ・声掛け…その自立行為や自立動作が安全に又は確実に行われるように、事前にあるいは必要に応じて声を掛けること。
- ・手添え…支援員が手を添えて一部の行為や動作を促して十全なものにすること。
※施設や事業所によって呼び名や言い方、方法は異なります。
食事
主には食事介助が支援となります。
利用者それぞれ必要としている支援は異なります。
もちろん自分で食べられる利用者も多いのですが、配膳や自助具、エプロンの準備、口に運ぶ介助、さらには食事中付き添わなくてはならないこともあります。
入浴
これも必要な支援は利用者によりさまざまです。
例えば、洗髪はきちんとできるけれど、洗体は職員による仕上げが必要だったりするんですね。
車椅子利用者には、移乗や機械浴の操作を行うこともあります。
排泄
排泄は大切な支援でありながら、障がい者支援の未経験者にはキツイ支援かもしれません。
うまく便器で排泄することが難しい利用者も少なくないからです。
その失禁処理も生活支援員の仕事となります。
オムツを履いている利用者もおり、ゆくゆくは排泄が自分で、適切に行うことができるようにする支援も必要です。
創作・生産活動
人並みの生活を目指すにあたり、一般的な仕事に値する「活動(作業)」を行います。
これは、主に3っの目的があります。
- 作品として
- 身体機能の維持・向上
- 工賃
それぞれの目的の達成のため、利用者それぞれの特性を活かしながら支援していきます。
工賃とは…
雇用契約を伴う賃金とは区別される、生産活動の手間賃のこと。
最低賃金が設定されていないために、その工賃額はたかが知れている。就労継続支援B型や生活介護事業で行われる訓練の一環としての生産活動の対価とも言える。
生活介護サービスにおいては、生産活動を行わない場合には、工賃を支払う義務はありません。
反対に、生産活動を行う場合には、工賃を支払う義務が生じるのですが、
その工賃が微々たるものであっても、生産活動を通じた社会経験やお金を稼ぐという経済活動、家計の支えとしてのお小遣いが、
施設を利用する障がい者にとっても、障がい者の家族や保護者にとっても、メリットが大きいとの観点から
生活介護サービスで生産活動を取り入れる事業所も多いようです。
次の表は、生産活動を行なっている生活介護の平均工賃です。
出典:「平成28年度生活介護事業所(通所型)実態調査報告」公益財団法人日本知的障害者福祉協会日中活動支援部会
調査対象1,082事業所のうち4分の3にあたる824か所(76.2%)が生産活動を行い、工賃を支給していたが、
平均5,000円/月未満が半分以上を占めている。
これを人数分で割った金額を支給するわけですから、1人数百円程度しか渡せないことに。
それでも利用者は喜び、何を買おうかと悩んでいる姿は愛おしいものです。
余暇活動・イベント
社会的交流の経験や社会的適応、リフレッシュを目的とした外出や外食、歳時記に合わせたイベントの実施など、余暇活動にも力を入れている施設も多いです。
外出や外食は、危険をも伴うため支援員にとっては大きな負担ではありますが、
利用者が大いに楽しみにしている活動の1つです。
利用者の新たな経験と楽しみの発掘のために支援員は計画段階から携わることもあります。
生活介護の1日の日課
一般的には利用者の活動時間は9:00〜15:30です。
個別の支援や具体的な支援は割愛し、大まかな流れを紹介します。
◯利用者の日課・行動/◎職員の日課・業務
- 7:30〜9:00
◯利用者送迎・来所
◎バスや普通自動車による送迎、
活動準備・お茶の準備等を行います。 - 9:00
◯来所時間
◎出席確認・挨拶を行います。 - 9:00〜
◯体温測定
◎全ての出席利用者の体温測定を行います。 - 9:30〜
◯活動準備・活動
◎活動準備と活動のための支援 - 10:30頃
◯休憩(トイレ・お茶)
◎お茶の配膳等支援
トイレ誘導・介助支援 - 11:50頃
◯活動物品片付け、食事準備
◎片付け支援、食事準備支援 - 12:00
◯食事開始
◎食事介助 - 12:30〜13:00
◯食器片付け、食事後休憩・活動準備
◎片付け支援、トイレ誘導・介助支援、活動準備支援 - 13:00〜
◯活動再開
◎活動支援 - 14:30頃
◯休憩(トイレ・お茶)
◎お茶の配膳等支援、トイレ誘導・介助支援 - 15:20頃
◯活動物品片付け、帰宅準備
◎片付け支援、帰宅準備支援 - 15:30〜
◯利用者送迎・退所
◎バスや普通自動車による送迎 - 15:30〜17:30
◯日中一時支援
◎片付け、翌日活動準備
※事務作業(ケース記録・日誌記録)
※法人や事業所の方針により時間や活動内容は異なります。
日中一時支援とは…
日中一時支援事業は、市町村など自治体が主体となる「地域生活支援事業」の一つとして提供され、一定の要件を備えた障がい福祉サービス事業所等に委託されて実施されている。
日中一時支援とは通所支援事業では、利用者活動の終了は基本的に15:30となりますが、利用者の保護者や家族の都合、休息(レスパイト)により、それ以降の時間に事業所内で利用者を預かるサービスです。
障がい福祉サービスにおける「短期入所」では宿泊を伴う施設利用であり、日中預かりは行っていない。
生活介護の生活支援員の事務作業
支援現場が主な仕事ですが、事務作業も大切な業務の1つです。
連絡帳記入
生活介護事業のような通所支援事業では、保護者との連絡・連携が重要です。
生活介護事業のような通所支援事業では、保護者との連絡・連携が重要です。
施設側では、利用者の様子や変化、今後のイベントの伝達、申し込み書類のやり取りを伝えるため、
保護者側では、自宅での利用者の様子や変化、申込書等の返送などを伝えるため、
保護者・利用者との意思疎通を目的として、連絡帳の管理と記入が事務作業の一つになります。
活動(作業)目標
活動・作業に関して、支援員から見て良かったこと、改善できることなど紙に記入して今後の目標を伝えるものです。
これは義務というわけではなく、法人や事業所により行っていないこともあり得ます。
後に説明する「個別支援計画」とは異なります。
出席簿
その日来所した利用者の出席・欠席を確認します。
欠席はその理由も、
遅刻や早退など、利用者の利用時間もできるだけ正確に記録しなければなりません。
これは、利用者の利用率に関わり、最終的には事業所の報酬(収入)には深く関わってくるからです。
日誌記入
提供するサービス毎に日誌を記入しなければなりません。
例えば、生活介護には生活介護サービスとしての全体的な日誌が存在し、
生活介護に配属された生活支援員などの職員が、その日の生活介護としての全体的な活動内容や利用者の出欠などを記入する必要があります。
ケース記録
来所した一日一日の利用者の活動の様子を記録しなければなりません。
障害者に対する福祉サービスを行う事業所は、利用者の活動の様子を記録する義務があります。
現在はパソコンで専用記録ソフトに入力する事業所が多いです。
この業務は非常勤職員でも任されることがあります。
ちなみにこのケース記録、利用者が来所した毎日が記録の基本です。
もし、忙しいという理由で後回しにしてしまうと後で監査時などで苦労しますのでその日の分はその日のうちに記入することをお勧めします。
もし、忙しいという理由で後回しにしてしまうと後で監査時などで苦労しますのでその日の分はその日のうちに記入することをお勧めします。
監査とは…
都道府県や市区町村などによる施設・事業所の調査のこと。
福祉サービスが適正に行われているか、書類が揃っているかなど、職員が立ち入り調査を行う。
個別支援計画
障害者に対する福祉サービスでは義務となっている事務作業です。
主には、正規職員の業務となります。
個別支援計画とは…
障害福祉サービスにおいて、事業所のサービス管理責任者(支援員)による、サービスを利用する障がい者や家族の意向やニーズをアセスメント(評価・査定)した上で作成される、その利用者に適したサービス内容等の計画書のこと。
また、個別支援会議で話し合われたサービス内容をまとめて計画すること。その書類のこと。
また、個別支援会議で話し合われたサービス内容をまとめて計画すること。その書類のこと。
個性豊かなそれぞれの利用者の自立等を目的として目標を立て、その目標に向けてどのような支援を行なっていくのか、具体的に作成していきます。
個別支援会議とは…
個別支援計画のために、利用者に提供できる、また、利用者にふさわしいサービスと支援について話し合う場のこと。
利用者本人やその家族、担当支援員、サービス管理責任者などが参加し、利用する事業所における、支援の見直しやアセスメント (再評価・検討)を行なう。
モニタリング(会議)
これも障害者に対する福祉サービスでは義務となっている事務作業です。
主には、正規職員の業務となります。
モニタリングとは…
概ね6ヶ月ごとに行うモニタリングとは、個別支援計画書を基に行ったそれまでの6ヶ月での支援の成果や反省点を踏まえ、今後の6ヶ月の新たな支援や方法、改善点などを書面にまとめ、利用者本人と保護者に伝えることです。
モニタリング面談などと呼ばれ、保護者に連絡し、日程調整を行い、面談して計画案を了承してもらう必要があります。
一定のモニタリング期間をののちにアセスメント(再査定)され、更新・作成される。
生活介護と生活支援員のやりがいと実情
生活介護の生活支援員のやりがい
働き始めてすぐには利用者それぞれの個性や特性を見抜くことは難しいのですが、
その個性や特性を活かした支援と利用者の成長だけでなく、個性や特性を知ることができた利用者との関わり自体がやりがいにつながることがあります。
- 利用者の成長
- 利用者の笑顔
- 頼られること
1,利用者の成長
障がい者もそれぞれ個性を持ち、それぞれ障がい特性を持っています。
施設利用者への支援と言ってもその支援方法は多岐にわたり一言では語りきれません。
個性や特性に応じた、利用者それぞれに提供する支援に同じものはないと言っても過言ではないくらいなのです。
その個性や特性を見抜き知ることが、支援員の1つの仕事でもあるわけですが、
より密接に関わる生活支援員だからこそ見抜き知れる個性や特性があるはずです。
障がい者支援が利用者の自立や成長を目的とするならば、
現場で関わる生活支援員こそが自立や成長の目的を達成できる身近な存在でなければなりません。
それは、利用者の個性や特性を活かした支援が利用者の自立と成長に直結しやすいからです。
個性や特性を無視した支援に自立や成長はないと思います。
現在働いている生活支援員はそれを自覚できる状況ではないのかもしれませんが、
それほど利用者の自立と成長にとって可能性を秘めた仕事であるのです。
それほど利用者の自立と成長にとって可能性を秘めた仕事であるのです。
2,利用者の笑顔
笑顔、といってはきれいごとに聞こえてしまうかもしれません。
また、自己満足と言われかねないことかもしれません。
ただ、事実、僕の経験からも、利用者の笑顔に癒されることも確かです。
僕らが忘れかけた、素直な、純粋無垢の、汚れのない笑顔を見たら最後、
またその笑顔を見たいがために笑わせようとします。
(…なんてことをするのは病んでいる僕だけかもしれませんが。)
きれいごと、自己満足と言われようが、
あの手この手で利用者を喜ばせたり笑わせたり、
笑顔を見ることは僕の喜びでもありました。
また、利用者を喜ばせたり笑わせたりすること自体、意思疎通できている証拠ですし、
慣れない、あるいは喋れない利用者との意思疎通の訓練にもなるのはずです。
3,頼られること
障がい者が施設を利用する理由はいくつかあります。
障がい者の自立のため、生活訓練のため、保護者のレスパイト(休息)のため、などがあります。
利用者本人が望んで施設を利用するということは少ないとはいえ、
施設と契約したならば、施設利用中は支援員がすべてと言ってもいいでしょう。
そうです、見知らぬ他人に頼らざるを得ないのです。
利用者をあわれんでいるわけではなく、また、
それが上下関係を生み、虐待を生む土壌となり得ることは置いておきますが、
そんな事情を知ってか知らずか、多くの利用者が素直に支援員を頼ってくれます。
特に僕のような、自立した立派な社会人、と豪語できない人間にとっては、
人から頼られ、慕われることは僕の喜びの1つなのです。
もちろん、仕事の多忙さや利用者のしつこさ、他職員との人間関係などに辟易することは多々ありますが、
こうして僕が誰にも頼ることのない、自立した立派な社会人になろうとすればするほど、
利用者とのたわいない関わりが、喜びとやりがいを生んでいたことを実感するのです。
生活介護で働くための資格は必要か?
生活介護で働くために必要な資格は特にありません。
そして、生活支援員にも特に資格は必要ありません。
介助というからには、介護系資格があればなお良いでしょう。
また、近年は重症心身障がい者や強度行動障がいなど重度の障がい者の生活介護の利用も増えているため、
介護職員初任者研修修了者や医療的ケアが行える介護福祉士、強度行動障害支援者養成研修修了者が優遇される可能性はあります。
重症心身障がい者とは…
重度の肢体不自由と重度の知的障がいとが重複した状態の障がい者のこと。
重度心身障がい者のこと。短く、重心(ジュウシン)とも呼ばれる。
強度行動障がいとは…
環境の刺激や情報を適切に処理することができず、それらをどうしたらよいか分からず伝えることもできない、不安や不快感、要求が自傷や他害といった形ででてきたもの
または、
本人が「困っている」ことのサインとして自分や他人に不利益を与えかねない行動障害が強く現れたもの
学術的には、
精神科的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、 間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難であり、行動的に定義される群、また、家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態
出典:行動障害児(者)研究会、1989年 ※太字筆者
生活介護の生活支援員として働く心構え
僕の経験から言えば、障がい者支援、特に現場(直接)支援は支援する人の本性や本質があらわになる仕事です。
つまり、資格とか、肩書きとか表面的なものは二の次と思われるのです。
支援する人の、人としての人格や人間性が試される場と言ってもいいくらいの仕事なのです。
それぞれが個性を持った利用者をそれぞれが個性を持った支援員がよりプライベートな領域まで踏み込んで関わるわけです。
さらに3Kと言われるような、シモの世話など利用者のキレイではない一面を見ることも少なくありません。
自分を主張する人格を持った利用者との軋轢やシモの世話などに、
耐える、とか、慣れる、とか、そんな気概だけで長く続けられるような簡単な仕事ではないのです。
3Kとは…
・きつい
・きたない
・きけん(あるいは、きゅうりょうが安い)
福祉の現場において、悪い意味の仕事の象徴としてこの3っの言葉の頭文字をとって3Kと言われる。
まとめ
生活介護事業は多くの障がい者に利用され、その分生活支援員も必要とされています。
利用者にとって生活支援員は必要な支援者なのです。
支援業務は簡単なものではありませんが、その分やりがいも多く見出せると思います。
また、現在働いている方も自分を見失いがちな日々の業務の中で、改めて利用者や事業所、業務や自分自身を見つめ直すきっかけになってくれればと願っています。
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