強度行動障害と今後の支援について

強度行動障害と今後の支援障がい福祉資格・研修
この記事は約13分で読めます。

みなさんおつかれさまです!

障がい者施設で働いて数年、なんか突然のように強度行動障害なんて言葉を耳にしたような気がします。

そもそも強度行動障害とは何なんでしょう?

いつからそんな言葉が出てきてたの?
どういう経緯があったの?

今までの支援とどう違うの?

現場はどう変わっていくの?

そんな疑問にお答えしたいと思います。

強度行動障害と今後の支援について
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強度行動障害とは

いつから

強度行動障害という名称は、1988年にスタートした行動障害児(者)研究会において命名されたものです。

出典:「【資料】強度行動障害に関する研究と支援の歴史」国立障害者リハビリテーションセンター

かなり前からこの言葉が使われ始めたんですね。

意味

精神科的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、 間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難であり、行動的に定義される群、また、家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態

出典:行動障害児(者)研究会、1989年 ※太字筆者

であるとのこと。

もう少し分かりやすく言うと、

自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、
危険につながる飛び出しなど本人の健康を損ねる行動、
他人を叩いたり物を壊す、
大泣きが何時間も続くなど

周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態のこと

出典:「強度行動障害支援者資料 」発達障害情報・支援センター 国立障害者リハビリテーションセンター ※太字筆者

です。

障がい者施設で働いていれば、こういう行動をする利用者も思い浮かぶんじゃないでしょうか。

簡単に言わせてもらえば、行動障害が極端に現れた、障害ということです。
(そのまんまかよ👋)

行動障害とは

よく耳にするするけど、今更人に聞けない!
行動障害の意味は、

それぞれの学問や分野で定義は若干異なるようですが、共通しているのは、

自分や他人に不利益を与える行為

ということです。

障がい福祉においては、

環境の刺激や情報を適切に処理することができず、それらをどうしたらよいか分からず伝えることもできない、

不安や不快感、要求が自傷や他害といった形ででてきたもの

出典:強度行動障害支援者養成研修【基礎研修】プログラムテキスト 独立行政法人国立重度知的障害者総合支援施設のぞみの園 ※赤字筆者

で、それが極端に強く表れたのが強度行動障害ということです。

さらに、行動障害は、

①障害特性を背景として本人と環境(人的な環境を含む)との相互作用の結果として生まれるものであり、
②周囲を「困らせる」行動ではなく、本人が「困っている」ことのサインである

出典:強度行動障害支援者養成研修【基礎研修】プログラムテキスト 独立行政法人国立重度知的障害者総合支援施設のぞみの園 ※赤字筆者

と書かれています。

つまり、(人的)環境を改善すればその症状も緩和される余地があることを示唆していますよね。

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強度行動障害に対する施策と経緯

僕は数年前に強度行動障害支援者養成基礎研修を受講しました。

強度行動障害なんて何の知識もないままに、言われるがままに受けたこの研修…

(自分を納得させるためにも!)

この研修自体が始まるに至った経緯を簡単に振り返ってみます。

ただ、このような歴史は覚える必要はないです。

かくいう強度行動障害支援者養成研修の講師方々も歴史や経緯はさらっと流しますから。

実際の講習は、テキストを使うというより、演習や講師の支援実例、DVD鑑賞が中心なのです。

歴史などは、以下、興味のある方だけ読み進めてください。

強度行動障害支援者養成研修については、別の記事で紹介しています。⬇️

経緯(国の施策)

強度行動障害児(者)支援に関する施策年表

  • 1988年〜 行動障害児(者)研究会の報告書
  • 1993年〜 強度行動障害特別処遇事業
    強度行動障害児者を対象に、専用設備・指導員配置・個別プログラムによる、3年間の施設で行う支援事業。
    5年で廃止となった。
  • 1998年〜 強度行動障害特別処遇加算費
    一般予算化され、加算の仕組みが導入される。
  • 2006年〜 重度障害者支援加算
    居宅事業の施策として、行動援護と短期入所、共同生活介護(ケアホーム)における重度障害者支援加算の導入
  • 2012年〜 障害者虐待防止法
    行動障害のある障害者への虐待、暴行による死亡事故などを背景に施行される。
    行動障害に対する支援スキルの不足が指摘される。
  • 2013年〜 強度行動障害支援者養成研修事業
    強度行動障害者に対応する専門的な人材の育成と研修体系の整備

経緯(福祉関係機関・医療機関・研究機関)

強度行動障害児(者)支援に関する研究・対策年表

  • 1960年代後半〜 動く重症児対策
    支援の難しい障害児を「動く重症児」と呼んでいた。
    強度行動障害と同じ状態像であったかは疑問視する声がある。
  • 1970年代前半〜 精神医療を中心としたモデル事業
    国が助成する自閉症児施設(公立病院)で医療を中心に療育したが、治療効果は期待できなかった。
  • 1980年代 自閉症と強度行動障害
    当時、自閉症への理解や研究が進んでおらず、診断基準も曖昧であり、強度行動障害との関連性も見出せなかったが、80年代に入り少しずつ自閉症の研究が進み、療育方法も試されてきた。
  • 1988年〜 行動障害児(者)研究会の報告書
    強度行動障害が複合的な問題であり、総合的全体的に対応することを基本的な立場とすること。
  • 〜現在 強度行動障害の研究
    強度行動障害に対する実践的な研究成果である「ベストプラクティス」とそれに影響を与えた、アメリカの自閉症包括的支援プログラム「TEACCHプログラム」の存在。

ここまでのポイント!①

ここまで長々と歴史のお勉強をしてきましたが、

結局何が言いたいかというと…

今では施設で当たり前のように行なっている支援、

例えば、

個室やパーテーションで区切った静かな環境での作業や活動、

写真や絵を使った、構造化と言われる支援は、

多くの障がい者と支援者、研究者や関係各位の、50年という半世紀の歴史の成果なんです!

(うん、納得。と自分に言い聞かせる。。。。。)

まあ、何より歴史が現場支援員にとって意味を持つのは、支援が試され変化し続けた結果今の支援がある、ってことです。

覚えておきたいポイントは、

  • 強度行動障害は、知的障害や身体障害など、精神科的な診断として定義されるものではなく、行動面の症状の一つであること。
  • 強度行動障害の対象者には、自閉症の方が多い。
  • 強度行動障害対象者への支援方法は、自閉症対象者にも有効である。

ということ。

ちなみに、強度行動障害に対する実践的な研究成果である「ベストプラクティス」の支援を紹介します。

強度行動障害に対する実践的な研究成果である「ベストプラクティス」

出典:「【資料】強度行動障害に関する研究と支援の歴史」国立障害者リハビリテーションセンター
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強度行動障害の判定基準について

強度行動障害について意味と歴史を説明してきました。

研究の成果や国の施策によって、支援のあり方も変わってきたことが分かります。

そして、これから今の現場の支援がどう変わっていくのかを見る前に、

強度行動障害の判定基準について触れておきたいと思います。

強度行動障害の判定基準の緩和と認定される対象者の増加

みなさんの施設で強度行動障害と判定された利用者はどれくらいいるでしょうか。

全国では、約8,000人いると推計されます。

障がい児者全体の1.2%ほど。

ちなみに僕が勤めていた法人内では全体の13%

50数名強度行動障害者がいました。

どんなに支援の難しい障がい者でも受け入れてきた結果です。

現場で支援する身にもなってほしい😭)

ところで、以前より全国8,000人の強度行動障害者は、節目節目で増えてきていますが、
(※平成26年4月現在で約3万人と言われている。重度障害者支援加算対象者数+行動援護利用者数)

強度行動障害者が増えたというより、
その判定基準が緩和された影響のためなんですね。

強度行動障害の研究によって、その実態が明らかになるにつれ、国の施策も変わってきたわけです。

年代と事業による強度行動障害判定基準の変化

出典:「【資料】強度行動障害に関する研究と支援の歴史」国立障害者リハビリテーションセンター

この図から分かることが、

  • 事業により判定基準が異なること。かつ、
  • 年代と施策で判定基準が異なること、が挙げられます。

ややこしいですよね。

でも共通しているのが、

  • 年を追うごとに、強度行動障害と認定し得る基準が下がってきていること、

なんです。

ここまでのポイント!②

つまり、支援の難しい障がい者が、入所やグループホーム、在宅のそれぞれの事業、施設で手厚く障害福祉サービスを受けられるように、強度行動障害認定の判定基準を下げてきたわけです。

これによって、

  • 受け入れを拒否された障がい者を持つ家庭や家族、保護者にとって、サービスを受けられやすい環境が整ってきた。
  • 受け入れる施設も報酬を得られることができた。

ということです。

時代とともに良い方向へ変化してきたと思われます。

じゃあ、続いて、現場の支援はどう変わっていくのか?

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強度行動障害に対する支援の範囲と今後の支援のあり方

現場の支援員にとっては、目の前の利用者が強度行動障害かどうかなんて頭になく、

いつものルーティンに従って支援しているだけで、何も変わることはないと思うかもしれません。

その日その場の業務・支援に精一杯であるために現場以外に目を向けている余裕がないのが現状です。

あるいは、強度行動障害や自閉症の支援技術が現場で当たり前のように機能しているために実感がわかないのかもしれません。

実際は、変わってきたし、今後も変わっていくはずです。

今後、強度行動障害に対する具体的な支援を別の記事で紹介する予定です。

現場支援の範囲

強度行動障害の判定基準が下がったことで、認定される対象者が増えてきたわけですが、

つまり、

強度行動障害という狭いくくりの中で見ると、

障害の度合いに差がある、さまざまな特性を持つ強度行動障害対象者が混在しているということです。

それだけ対象者に幅広い支援を行う必要性が生まれてくるんですね。

今までの強度行動障害の歴史と支援のあり方の変遷、そして国の施策が、

実は、現場の支援の範囲をも広げているということを知らなければなりません。

そして、質の高い支援をも求められています。

国の方針と施設の義務

また、現場とは離れての施設職員の業務が増えています。

強度行動障害に対する国の施策の一つとして、前述した「重度障害者支援加算等」がありますが、

その算定要件として、個別支援計画とは別に、

支援計画シート、支援手順書兼記録用紙

の作成が加えられました。

めんどくさい!と言ってしまっては元も子もないんですが、

それは、強度行動障害など重度の障がいに対して、

個別支援計画よりも専門的で、具体的な支援計画とその支援が必要であることを意味しています。

また、2013年から始まった、

強度行動障害支援者養成研修の修了者を配置すること

も要件に加えられています。

そう、施設としては、研修を受けた人がいないと加算されない(報酬がもらえない)ので、

強度行動障害に認定された対象者を多く受け入れた施設ほど、

何はともあれ四の五の言わさず有無を言わさず!

支援員を研修に参加させるわけですよ。

本当に必要な研修であること、何のための研修であるかを事前に教えていただけるとモチベーションも違うと思うんだけどね…。

ここまでのポイント③

  • 障害の度合いに差がある、さまざまな特性を持つ強度行動障害対象者に幅広い支援を行う必要性が生まれてきた。
  • 新設された重度障害者支援加算等では、支援計画シート等の作成と強度行動障害支援者養成研修修了者の配置をその要件とした。
  • 施設としても、強度行動障害の対象者を受け入れ報酬を得るために、対象者個別に支援計画シート等の作成と、強度行動障害支援者養成研修修了者の配置を余儀なくされた。

支援の難しい障がい者のために、国と施設と支援が大きく動いた時代の変化を痛感します。

そして、ここまでの強度行動障害に関わる出来事今後の強度行動障害に関わる支援を語る上で欠かせない背景には、

行動障害のある障がい者に対する虐待

が大きく関わっています。

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今後の支援のあり方と虐待防止

障がい者への虐待が徐々に明るみになり、社会問題となりつつある最中、

障害者虐待防止法が2012年に施行されました。

行動障害のある障がい者への虐待

その後の2019年度の調査結果報告書を検証すると、

事実確認の結果、認定された虐待のうち、

養護者による障がい者虐待において、被虐待障害者に行動障害があった割合が、合算で

約30%

養護者による障害者虐待;被虐待障害者の行動障害の有無

出典:「平成29年度障害者虐待防止法対応状況調査報告書」 厚生労働省

障害福祉施設従事者等による障がい者虐待においても、合算で、

約30%

ありました。

障害者福祉施設従事者等による障害者虐待;被虐待障害者の行動障害の有無

出典:「平成29年度障害者虐待防止法対応状況調査報告書」厚生労働省

今だに行動障害を持つ障がい者への虐待が3割あるわけです。

通報され、認定された虐待だけで3割、

そして、行動障害の有無が不明であること、

それをふまえると、顕在化されていない行動障害を持つ障がい者への虐待がどれだけあるのか計り知れません。

今後の支援のあり方

なぜ人は人を虐待するのかと言われれば、

人をコントロールしようとして、それができないから、

だと僕は思います。

強度行動障害の対象者を、関わる人が思うようにコントロールしようとすれば、虐待につながります。

それは、自閉症や強度行動障害の特性を知っている人であれば分かります。

だからこそ、研修や支援計画によって、知識とともに支援スキルを向上させなければならないのです。

ただ、それでも支援に行き詰まり、虐待に関わる「制限」を強度行動障害対象者に課してしまう状況があり得ると思います。

それはもう、現場で支援する、あなた一人の問題ではなくなっています。

施設やチームで共有し考えるべき問題です。

認定される強度行動障害対象者が増えれば増えるだけ、支援も多様化しています。

あなたやあなたの施設の現場の支援も見直すときが来ているのかもしれません。

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まとめ

いかがだったでしょうか?

長くなりましたが、強度行動障害について簡単にまとめると、

現場支援員に求められていること

  • 強度行動障害の対象者に、個別支援計画より具体的な、支援計画シート等の作成
  • 強度行動障害対象者への幅広い対応と、より質の高い支援の提供が迫られている。
  • 虐待防止の観点からも、自閉症や強度行動障害対象者への支援を見直さなければならない。

国の施策

  • 強度行動障害支援者養成研修の実施
  • 強度行動障害の対象者への支援計画シート等の作成を重度障害者支援加算の要件とする。
  • 強度行動障害支援者養成研修修了者の配置を重度障害者支援加算の要件とする。
  • 障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修の実施。

施設の実施項目

  • 強度行動障害が加算(報酬を得ることができる)対象となり、強度行動障害対象者を受け入れ易くなった。
  • 強度行動障害の対象者に、個別支援計画より具体的な、支援計画シート等の作成。
  • 強度行動障害支援者養成研修修了者の配置。
  • 強度行動障害に対する、手厚く具体的専門的な支援の提供とそのための環境整備
  • 強度行動障害や自閉症、虐待防止についての知識の提供など支援者への教育と意識改革。

前述したように、増える強度行動障害対象者に対する支援もそれだけ多様化していきます。

現状推奨されているような、自閉症や強度行動障害対象者に対する、基本的な支援技術というものを疑うことも必要になってくるはずです。

また、施設側も多様化する支援を実行に移せるだけの余力を備えていなければならないときが来ているのだと思います。



障がい者と支援者を応援しています!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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