![人と国の多様性の象徴](https://gyakutairon.com/cogumelo/wp-content/uploads/2022/05/tim-russmann-cRFH-ZkVAag-unsplash-800x533.jpg)
ある施設利用者から言われた言葉が忘れられません。
「…自分は障害者と思っていない」
今まさに乗っている車椅子や手足の動き、聞き取りやすいとは言えない滑舌とは裏腹なその言葉に僕は戸惑い、二の句が継げなくなるのでした。
「障害」や「障害者」という言葉や概念について考えれば考えるほど、果たして彼を障がい者と名付けることは適切であるのか、はたまたどこか生きづらさを抱えている自分も障がい者と括られてもおかしくはないのではないかと混乱するばかりです。
あなたがもし施設利用者から自分は障がい者ではないと言われたら、何と返しますか?
※この記事内では日本の省庁等の公文書と諸外国語の公文書の和訳で使用されている表記に従い、障「害」、障「害」者という漢字で記述します。
『「障害」に関する検討結果について』内閣府
定義と目的
![地球儀](https://gyakutairon.com/cogumelo/wp-content/uploads/2022/05/kyle-glenn-nXt5HtLmlgE-unsplash-800x533.jpg)
まず初めに、「障害」または「障害者」の定義と定義される目的について
定義とは
言葉が言葉であるために、意味のない言葉はありません。
「障害」や「障害者」にも意味があり、意思疎通や伝達のために使用されます。
定義とは、その言葉を使って人間同士の意思疎通のために意味を限定して説明することです。
より公に「障害」を伝達し共有する場合、国の制度や法律に定義されます。
制度や法律には目的があり、その目的を達成するために定義する必要があるのです。
定義と目的
制度や法律は目的に沿って「障害」を定義します。
大きく分けて2っの目的があります。
①「障害(者)」の範囲を決めて対象(者)を限定するため
②(①を包括するように)理念を表すため
①は、例えば知的障害者福祉法などサービス提供のために個人を特定する場合。
障害認定制度を設けていることが多い。
②は、障害者基本法など、広く多くの対象を含め、理念として掲げる場合。
以上を踏まえた上で日本や国連、各国の「障害」あるいは「障害者」の定義について見ていきたいと思います。
海外
![国連事務局と国旗掲揚](https://gyakutairon.com/cogumelo/wp-content/uploads/2022/05/mathias-reding-yfXhqAW5X0c-unsplash-800x533.jpg)
主に国連で採択された各種宣言や条約等を中心に障害や障害者についての定義を紹介します。
国際連合のこと。
世界の平和と安全の維持、国際問題の解決等を目的とし、第二次世界大戦後の1945年10月に設立。
現在の加盟国は193カ国(令和4年時点)で、日本は1956年に80番目の国として加盟。
障害者の権利宣言
1975年国連総会にて採択。
「障害者」という言葉は、先天的か否かにかかわらず、身体的又は精神的能力の不全のために、
「障害者の権利宣言」特定非営利活動法人長崎人権研究所
通常の個人又は社会生活に必要なことを確保することが、
自分自身では完全に又は部分的にできない人のことを意味する。
1971年に採択された「精神遅滞者の権利に関する宣言」を踏まえ発展させた宣言。
「精神遅滞者の権利に関する宣言」障害保健福祉研究情報システム
国際障害者年行動計画
1976年国連総会において、「完全参加と平等」のテーマと諸目的を掲げ、1981年を「国際障害者年(IYDP)」とすることを採択。
のちの1979年、加盟国がその目的を達成するための計画(国際障害者年行動計画)が採択された。
障害者は、その社会の他の異なったニーズを持つ特別な集団と考えられるべきではなく、その通常の人間的なニーズを満たすのに特別の困難を持つ普通の市民と考えられるべきなのである
1980年、国連・国際障害者年行動計画第63項
「障害者基本法の2009年改正の課題」障害保健福祉研究情報システム
「国際障害者年の宣言と障害者年に向けて」障害保健福祉研究情報システム
「障害者に関する世界行動計画と国連障害者の10年」障害保健福祉研究情報システム
障害者権利条約
2006年国連総会にて採択、2008年発効。
正式名称を「障害者の権利に関する条約」とするこの条約で、第一条の目的の中に明記。
障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、
「障害者の権利に関する条約」外務省
様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として
社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。
日本はこの条約に2007年に署名、2014年に締結。
(署名とは賛成すること、締結は約束することと同義。)
WHO
WHO(世界保健機構)によるICIDH(国際障害分類)及びICF(国際生活機能分類)という分類法があるが、ここでは割愛。
各国における障害の定義
「各国における障害の定義」障害保健福祉研究情報システム
「障害者の福祉サービスの利用の仕組みに係る国際比較に関する調査研究事業報告書」障害保健福祉研究情報システム
アメリカ
障害を持つアメリカ人法(Americas with Disabilities Act)、通称ADAによる身体・精神的障害を理由とする差別を禁止する連邦法で1990年に制定された。
(A)主たる生活活動の1ないしそれ以上を実質的に制限する身体あるいは精神障害
斉藤明子訳.第3項定義.アメリカ障害者法【全訳】現代書館.1991年,p.6/
(B)上記の障害の過去の記録
(C)そのような障害を持つとみなされること
「障害者の福祉サービスの利用の仕組みに係る国際比較に関する調査研究事業報告書第8節アメリカ合衆国」障害保健福祉研究情報システム
他に障害者に対する比較的包括的な定義としては、カリフォルニア州のランターマン発達障害者サービス法がある。
これにはIQ69以下の知的障害、自閉症が含まれるが、身体障害だけでは対象にならない。
「障害を持つアメリカ人法の基礎」Christopher & Dana Reeve Foundation
イギリス(UK)
1995年制定されたイギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを含む連合王国)の障害者差別禁止法、通称DDAより。
日常生活を送ることを阻む重大で長期的な身体的、または精神的な障害を持つ人々のこと
障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act;DDA)/
「障害者の福祉サービスの利用の仕組みに係る国際比較に関する調査研究事業報告書第7節イギリス」障害保健福祉研究情報システム
過去に障害を持った人も含まれている。
現在DDAは廃止され、その内容は平等法(Equality Act)に引き継がれている。
DDAと平等法との違いは、DDAが「障害者」に、平等法は「障害」に焦点を当てている点、また、対象者の判定に用いられていた日常生活リストなどが廃止され、より広く門戸を広げている点にある。
「1995年障害者差別禁止法(DDA)から 2010年平等法に引き継がれたもの」早稲田大学リポジトリ 社学研論集vol.21 杉山有沙
フランス
フランスにおいては、各法、制度で障害の定義や範囲等は異なるが、より包括的な定義は社会福祉・家族法典にある。
1つ又は複数の身体・感覚器官・知能・認識・精神に関する機能の実質的永続的決定的悪化、
社会福祉・家族法典L.114条/
重複障害、あるいは、健康上のトラブルを理由として、
障害者が、その環境において被る活動の制限あるいは社会生活への参加の制約のすべて
「障害者の福祉サービスの利用の仕組みに係る国際比較に関する調査研究事業報告書第4節フランス」障害保健福祉研究情報システム
障害を理由とする差別禁止に関する体系的な法律は存在しないが、2005年に「障害者の権利と機会の平等、参加、市民権に関する法律」が制定、「適切な処置」(合理的配慮のこと)の概念が導入された。
スウェーデン
一定の機能的な障害のある人々に対する援助とサービスに関する法律、LSSに障害の定義が明記されている。
スウェーデンにおいては障害者を「機能障害者」と呼んでいる。
区分1:
一定の機能的な障害のある人々に対する援助とサービスに関する法律(LSS)/
発達遅滞者、自閉症または自閉症的症状を示す人々
区分2:
成人に達してからの外傷または身体的疾患に起因する脳障害により、
重篤かつ恒久的な知的機能障害のある人々
区分3:
明らかに通常の高齢化にはよらない、他の恒久的な身体的または精神的機能障害のある人々。
つまり、障害の程度が重く、日常の生活を送る上で著しい困難さが見られるため、
広範な援助とサービスを必要とする人々
「障害者の福祉サービスの利用の仕組みに係る国際比較に関する調査研究事業報告書第5節スウェーデン」障害保健福祉研究情報システム
LSSにおいては、その対象を身体、知的、精神障害者としている。
また、障害のある個人が社会的役割を果たせるように未整備な環境に介入することが必要だという「伝統的な障害観」が根底にある。
日本
![日本の神社と信仰](https://gyakutairon.com/cogumelo/wp-content/uploads/2019/10/39BC12DC-71E3-4127-81F0-1639E8D6710A-800x533.jpeg)
日本においてはどうでしょう。
日本の法や制度の定義にも包括的なもの、個別的なもの、中には他の定義を借用している場合もあるようです。
障害者基本法(改正)
1970年(昭和45年)に成立した障害者基本法(旧心身障害者対策基本法)が2011年(平成23年)に改正され施行。
障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)
「障害者基本法」イーガブ法令検索
その他の心身の機能の障害がある者であつて、
障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に
相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
「社会的障壁」、「合理的配慮」など障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)の理念を盛り込んだ形で改正された。
この法律及び定義は、以降様々な日本国内の関連法の基礎となり、影響を与えている。
身体障害者福祉法
1950年(昭和25年)施行。
1967年、1972年、1984年、1990年、2000年、2005年と度々改正されている。
この法律において、「身体障害者」とは、
「身体障害者福祉法」イーガブ法令検索
別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、
都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
身体障害者福祉法における定義は、手帳の取得を条件としており、別途障害の等級が提示されている。
「身体障害者福祉法施行規則 別表第五号 身体障害者障害程度等級表」イーガブ法令検索
「身体障害者福祉法施行規則 別表第五号 身体障害者障害程度等級表(改変)」長野県
「身体障害者手帳制度の概要」厚生労働省
知的障害者福祉法
1960年(昭和35年)施行。1988年に精神薄弱者福祉法を知的障害者福祉法へ改称。
何度となく改正され現在に至る。
明確な定義は現在も規定されておらず、まずは知的障害者に対して発行される手帳についての記述を参考。
手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において
「療育手帳制度について」昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知〜一部改正
知的障害であると判定された者に対して交付する。
手帳交付に当たっての判定基準は自治体により異なり、その区分や名称もそれぞれ。
![](https://gyakutairon.com/cogumelo/wp-content/uploads/2019/07/admission-2974645_1280-500x333.jpg)
他に、知的障害児(者)基礎調査における用語の定義として知的障害児(者)を規定している。
知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、
「平成17年度知的障害児(者)基礎調査結果の概要 用語の定義」厚生労働省
何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの
また、その判断基準は、
次の(a)及び(b)のいずれにも該当するものを知的障害とする。
「平成17年度知的障害児(者)基礎調査結果の概要 用語の定義」厚生労働省
(a)「知的機能の障害」について
標準化された知能検査(ウェクスラーによるもの、ビネーによるものなど)によって測定された結果、
知能指数がおおむね70までのもの。
(b)「日常生活能力」について
日常生活能力(自立機能、運動機能、意思交換、探索操作、移動、生活文化、職業等)の到達水準が
総合的に同年齢の日常生活能力水準(別記1)のa,b,c,dのいずれかに該当するもの。
としている。
具体的な知的障害の程度別判定表、または行動・保健面の判断表については割愛し、下記リンクを参照。
「知的障害者福祉法」イーガブ法令検索
「平成17年度知的障害児(者)基礎調査結果の概要 用語の定義(知的障害の程度/保健面・行動面について)」厚生労働省
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
法的規定としては、遡れば明治33年の精神病者監護法に端を発し、その後の昭和25年、今の精神保健福祉法の元となる法律「精神衛生法」が成立。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の公布・施行年といえばこの1950年(昭和25年)を指す。
これまで改正を重ね、その名称も1987年に「精神保健法」、1995年に現在の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」と変えている。
この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」イーガブ法令検索
知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。
他に、精神障害者保健福祉手帳において、その等級の判定基準(障害の状態)が示されている。
一級
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令」イーガブ法令検索
日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
二級
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
三級
日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、
又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
もう少し具体的には、
障害等級の基本的なとらえかた
「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」健医発第1133号平成7年9月12日厚生省保健医療局長※中略筆者
1級
精神障害が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの。
この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、
他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、入院患者においては、院内での生活に常時援助を必要とする。
在宅患者においては、医療機関等ヘの外出を自発的にできず、付き添いが必要である。
家庭生括においても、適切な食事を用意したり、後片付け等の家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、
常時援助を必要とする。
〜中略〜
2級
精神障害の状態が、日常生活が著しい制限を受けるか、
又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものである。
この日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は困難な程度のものである。
例えば、付き添われなくても自ら外出できるものの、
ストレスがかかる状況が生じ た場合に対処することが困難である。
医療機関等に行く等の習慣化された外出はできる。
また、デイケア、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立訓練(生活訓練)、
就労移行支援事業や就労継続支援事業等を利用することができる。
食事をバランス良く用意する等の家事をこなすために、助言や援助を必要とする。
〜中略〜
3級
精神障害の状態が、日常生活又は社会生活に制限を受けるか、
日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものである。
例えば、一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である。
デイケア、障害者総合支援法に基づく自立訓練(生活訓練)、
就労移行支援事業や就労継続支援事業等を利用する者、
あるいは保護的配慮のある事業所で、雇用契約による一般就労をしている者も含まれる。
日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じてくることもある。
〜中略〜
ちなみに障害等級の判定基準は、
1・精神疾患の存在の確認
2・精神疾患(機能障害)の状態の確認
3・能力障害(活動制限)の状態の確認
4・精神障害の程度の総合判定
の順で判定される。
具体的な判定基準は下記リンクに。
ちなみに以前は概念としてのみ含まれていた発達障害(者)が精神障害に含まれるとして明確に法律として規定されたのは、障害者自立支援法から障害者総合支援法に至る過程で、「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(平成22年公布)によって障害者自立支援法が改正された時。
これは障害者総合支援法も同様。
「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律の概要」厚生労働省
「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」健医発第1133号平成7年9月12日厚生省保健医療局長通知
障害者総合支援法
2013年(平成25年)施行。
正式名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」。
障害者総合支援法は前身の障害者自立支援法の内容を継承しつつ、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」によって改称された。
この法律において「障害者」とは、
「障害者総合支援法」イーガブ法令検索
身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、
知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者
及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者
(発達障害者支援法第二条第二項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。)
のうち十八歳以上である者
並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。
障害者総合支援法は改正障害者基本法の目的や原則を受け継ぎ基本理念としたこと、障害者自立支援法から障害者総合支援法への改称、障害者の範囲に難病等の追加、障害程度区分から障害支援区分への変更、ケアホームとグループホームの一元化などが盛り込まれた。
難病の患者に対する医療等に関する法律
2015年(平成27年)施行。
難病(発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう。以下同じ。)
「難病の患者に対する医療等に関する法律」イーガブ法令検索
難病の指定については随時追加され、また、その名称についても変更している可能性がある。
発達障害者支援法(改正)
2005年(平成17年)施行。
切れ目なく発達障害者の支援を行うことが特に重要であることに鑑み、2016年(平成28年)に改正している。
この法律において「発達障害」とは、
「発達障害者支援法」イーガブ法令検索
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害
その他これに類する脳機能の障害であって
その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
この法律において「発達障害者」とは、
発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、
「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
定義においては改正によって、「発達障害者とは」、「発達障害を有するために」から「発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により」…制限を受ける…と変更されており、発達障害が社会参加できない直接の原因ではなく、社会的障壁によって妨げられているという社会モデルを提示し、付け加えている。
児童福祉法
1948年(昭和23年)施行。
幾度も改正を重ね、近年では少子化や増加する児童虐待の予防、防止等に対して重きを置くようになっている。
この法律で、障害児とは、
「児童福祉法」イーガブ法令検索
身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童
(発達障害者支援法第二条第二項に規定する発達障害児を含む。)
又は治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であつて
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第四条第一項の
政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度である児童をいう。
障害者雇用促進法
1960年(昭和35年)「身体障害者雇用促進法」として公布され、1987年(昭和62年)に「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改称された。
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。第六号において同じ。)
「障害者の雇用の促進等に関する法律」イーガブ法令検索
その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、
職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。
改正法については2016年(平成28年)においては障害者に対する差別禁止と合理的配慮の提供義務が施行、2018年(平成30年)の施行では、法定雇用率の算定対象に精神障害者が追加された。
現行の法定雇用率(令和4年時点)は、2021年3月より0.1%引き上げられた数値で、
民間企業…2.3%
民間特殊法人…2.6%
国・地方公共団体…2.6%
都道府県等教育委員会…2.5%
となっている。
障害者虐待防止法
2012年(平成24年)施行。
正式な名称を「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」という。
この法律において「障害者」とは、障害者基本法第二条第一号に規定する障害者をいう。
「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」イーガブ法令検索
と、障害者基本法の定義に則っている。
改正については、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定により令和4年4月から以下の虐待防止に関する内容が努力義務から義務化へと変更されている。
1・従業者への研修実施
2・虐待防止のための対策を検討する委員会として虐待防止委員会を設置するとともに、
委員会での検討結果を従業者に周知徹底する
3・虐待の防止等のための責任者の設置
「令和3年度報酬改定における障害者虐待防止の更なる推進」厚生労働省
障害者差別解消法
2016年(平成28年)施行。
正式名称は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」。
身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」イーガブ法令検索
その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により
継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
この法律は障害者基本法第四条(差別の禁止)を具体的に規定したものであり、そのために障害者の定義についても同様の記述になっている。
主な内容は、
・不当な差別的取り扱いの禁止
・合理的配慮の提供
・差別を解消するための措置
改正法については2021年(令和3年)6月4日に公布され、以降3年以内に施行予定。
改正法では、努力義務であった民間事業者の合理的配慮の提供が義務となる。
国民年金法(厚生年金保険法)
1959年(昭和34年)公布。
直近の改正については2020年(令和2年)公布の「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(通称年金制度改正法)が2022年(令和4年)4月より施行された。
ここでは障害基礎年金の障害認定基準と等級についての定義を。
障害認定に当たっての基本的事項
「障害認定に当たっての基本的事項」日本年金機構
1 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が
日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。
この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、
他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、
それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、
すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、
家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。
2 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、
日常生活が著しい制限を受けるか
又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
この日常生活が著しい制限を受けるか
又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、
労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、
それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、
すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、
家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。
3 級
労働が著しい制限を受けるか
又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか
又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。
(「傷病が治らないもの」については、 第3の第1章に定める
障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。)
3級においては厚生障害年金のみ。
具体的個別の等級認定基準についても規定。
また、障害認定基準については度々改正され、直近では2022年(令和4年)1月1日に改正されている。
「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」日本年金機構
「国民年金法施行令 別表」イーガブ法令検索
「厚生年金保険法施行令 別表第一」イーガブ法令検索
「障害年金をもらうための要件」障害年金支援ネットワーク
障害者優先調達推進法
2013年(平成25年)施行。
正式名称を「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」。
この法律において「障害者」とは、障害者基本法第二条第一号に規定する障害者をいう。
「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」イーガブ法令検索
この法律の定義もまた、障害者基本法(改正)の趣旨を受け継いでいる。
「障害者優先調達推進法の概要」厚生労働省
まとめ
少なくとも日本国内において、身体障害者福祉法に則り手帳を取得し、障害福祉サービスを利用し、国民年金法に則り障害認定されている、自分を「障害者と思っていない」彼も「障害」を持ち、「障害者」であることは明らかです。
そして現状の日本国内の他者との関わりの中では、意思疎通や伝達のための彼を表す一つの的確な言葉が「障害(者)」であることは否めません。
彼の支援者として例えば、障害者としての割引や助成、付き添い者の入場の場面など、第三者に彼と彼の特性を伝えなければならない時、その必要性に駆られた場合、「障害者で…」または「障害を持っていて…」と伝えるのが一番分かりやすく、また、効率的なのです。
ただそれは公に見て、支援者の僕から見てということになります。
彼自身も便宜上世間一般から自分を障害者と呼ばれることは十分に認識しているはずですが、それでも彼が障害者のレッテルを貼られることに憤り、敏感に反応してしまう「当事者」としての理由があるのです。
「障害者だから…」できないことを家族や世間から責められてきた、これまでの彼の半生における障害者に対する差別や偏見が、「障害者」という字面以上に含まれているということは、彼の話を聞かない限り分からないことです。
人に助けを求めず過剰に自分でやろうとして時に利己的だと忌避される彼と、支援員の性(サガ)として何かと手助けしたくなって結果彼にたしなめられる僕との間には、見えない壁があります。
また、今では世界や日本で浸透しつつある「社会モデル」とも言われる、本当の「障害」は受け皿である環境、社会の方にあるという考え方も、それ以前のこれまでの障害当事者や彼に対する差別や偏見の内なる蓄積が払拭されない限り、溝は埋まらないと思うのです。
それでも当事者や彼を尊重することはできるはずです。
尊重とは何かを考えながらも、今後僕はあえて彼を「障害者」と呼ぶことはないでしょう。
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